2009年 11月 15日
岩渕/松井の動きは尻上がりに良くなった。「一方的にやられる流れだったが、何とか引き戻し、運よく勝てた」。岩渕はそう話したが、運は、よりそれを望む者に微笑むという。岩見/添田も勝利を渇望し、最後まで戦い続けたが、あと一歩だけ及ばなかった。
「気にしない気にしない、と言い続けていたが、やっぱり絶対勝って終わってやると思って最初は力みまくってた」と松井は振り返った。松井だけでなく、岩渕にも固さが見えた。試合後に「僕のことを粉砕して、二人には優勝して欲しいと本当に思っていたが、すみません」と岩渕が語っていたのは本音だったのだろう。
岩見/添田は最初から高い集中力を持って試合に入った。両者ともボールに鋭く反応し、添田は強いサービスを叩き込んだ。松井、岩渕は続けてサービスを破られ、第1セットはそのままの勢いで岩見/添田が先取する。
パートナーが固くなっているのを感じた岩渕は、松井に「相手もすごくいいプレーをしている。目の前のポイントだけに集中してやろう」と声をかけた。落ち着きを取り戻した岩渕/松井は集中力を増し、実力を発揮し始める。第2セットは互いにキープが続く中、タイブレークを制して取り返した。
このセット、何度もブレークポイントを握ったのは岩見/添田の方だったが、岩渕/松井はことごとくそれをしのいだ。「とにかくスコアを意識しないで戦っていた。気持ちで取った」と松井。自分が何を考えていたか思い出せない、と松井は本気で話した。
「もう、負けても後悔しなかったと思う」。過去に全日本を3度制したペアは、全力を出し切っていた。「第2セットを取った時、この展開であれば最終セットは自分たちの流れだと思っていた」と岩渕。その言葉通り、最終セットは岩渕/松井が流れをつかんで離さず、そのまま押し切った。
岩渕の全日本でのダブルス優勝は8度となり、最多記録を更新、松井とのペアでの4度は単独史上最多となった。しかし、岩渕は記録などなんでもないとでも言いたげな表情で「今までツアーやデ杯など、ダブルスで力を発揮できた。自分らしい終わり方だったと思います」と落ち着いて振り返り、「できすぎかな、とも思うけど」と、はにかんだように笑った。本当に岩渕らしいラストマッチだった。
浅岡隆太