2009年 11月 14日

「全然緊張しなかったし、むしろ大勢の観客の前でプレーできるのが楽しみだった」。決勝後の会見。髪を下ろし、普通の17歳の姿に戻った奈良は、軽く微笑みながらそう話した。「狙って取りにいったタイトル。とはいえ、すごくうれしいですし、全日本のタイトルを取ってこれからプレーするのは自信になります」。誰もが平常心の維持に苦労する全日本も、彼女にとってはあくまでも通過点でしかない。彼女の顔はそう言っていた。
「サーブがカギ。自分から早めに攻めていく展開が作りたい」と前日の米村は話していたが、序盤はその思惑通りの展開。米村は最初のゲームから奈良のサービスに襲いかかった。そのプレーには躍動感があり、リズムに乗って奈良を攻めたてていく。奈良は防戦に精一杯で、サービスキープがやっと。「米村さんの気迫は凄かった」。奈良はそう振り返っている。
年間を通じて一番大事な大会が全日本と言い、そのために準備してきたという米村。タイトルへの気持ちは誰よりも強かった。米村はボールに対して鋭く反応して先手を取って攻め、鋭いサーブをコートに突き刺して、リターンのいい奈良から次々とエースを奪った。
第3ゲームで先にブレークしたのは米村で、試合は米村の流れのまま、第1セット中盤を迎える。米村が4ー3とリードし、迎えたサービスゲーム。キープすれば5ー3で、セットの行方を決めるゲームだった。しかし、米村はこのゲームをやや一人相撲のような形で失ってしまう。奈良が息を吹き返したのは、このゲームからだった。第1セットは7ー5で奈良が逆転で奪った。
セットを取ったことで、奈良はさらに落ち着きを増し、そのショットは鋭くなっていく。一方の米村は焦りの色を隠せなくなった。劣勢になって、全日本に対する思いの強さが逆に重圧になって襲いかかってしまったのだという。足は止まり、奈良の逆襲を跳ね返せない。それでも相手のサーブにプレッシャーをかけようと、リターンで積極性を見せ続けたが、第3ゲームで2度あったブレークチャンスを奈良にしのぎ切られると力尽きた。奈良は最後だけ少し緊張したようなそぶりを見せたが、試合の流れには影響なく、米村を押し切って初タイトルを手中にした。
「今だから言えますが」と前置きした奈良は「大会前から、優勝する自分を妄想してました」と笑った。「最後にどういうガッツポーズをしようかな、とか。でも、全然うまくいかなくて、もう一回やり直したいぐらいです」。おとなしそうに見えて、大胆不敵。底知れぬ成長力を秘めた、新しい女王の誕生劇だった。
浅岡隆太