2008年 11月 7日

「どの大会も1回戦は難しい。とにかく結果がついてきたのでよかった」。この大会を最後に引退することを表明している森上が、試合後の記者会見で苦笑した。最後の挑戦で何としてでも全日本のタイトルを取りたいという気持ちが、第1セットでは空回りした。元世界ランキング41位らしくないプレーで、JTAランキング25位、同年代で過去2戦2勝の手塚を相手に、タイブレークまで持ち込まれる大苦戦だった。
立ち上がりは悪くなかった。第1ゲームをブレークする幸先の良いスタート。2ー1で迎えたサービスゲーム。手塚にポイントを先行される苦しい展開の中、バックハンドのエースを決めて追いついた森上が「カモン」と気合を入れた。ギアを一段上げて一気に乗っていくかと思わせた場面だったが、その後はミスが続いて、3度のデュースの末にサーブを落とし2ー2とされた。緩いボールを多用する手塚のペースにも惑わされ、気持ちのはやる森上がミスショットを連発した。
タイブレークでも苦しんだ。ベースラインを割ったように思えた相手ショットを「イン」と判定されてポイントを落とすと、「アウトや」とスタンドにも届く大声でアピールした。ポイントを3ー4と逆転された場面だったが、これで開き直ることができた。「ラケットを振り切っていくしかない」。本来の当たりが戻ったように、ここから鋭いショットを決めて7ー5でタイブレークを奪い、試合の流れをつかんだ。
これが11回目の出場。過去の全日本ではケガに悩まされることが多く、99年と03年のベスト4が最高成績だ。「全日本は誰もが欲しいタイトル。勝ちたいと強く思う気持ちが大事」「プレッシャーはあって当然。プラスに考えようと思っている」。森上は優勝したいという強い気持ちを隠さない。思わぬ苦戦だった初戦にも、「思ってる展開にならなかったが、勝てたのが収穫」と前向きに話す。左ひざの故障は忘れ、ポジティブシンキングで森上の最後の挑戦が始まった。
谷祐一