2008年 11月11日
全日本を2度ずつ制したチャンピオン同士のカード、本来なら優勝を左右する大熱戦が期待されるはずの岩渕聡(ルネサンス)対寺地貴弘(旅ポケドットコム)。しかし、これが残念ながら、29歳寺地の早すぎる全日本引退試合となってしまった。さる6日に自身のブログで現役引退を発表して臨んだ、寺地最後の個人戦。4歳年上にして今大会の優勝を狙う第3シードの岩渕と2回戦で当たる厳しいドローにも、寺地は「優勝経験者、デ杯のチームメイトだった岩渕さんが最後の相手で、納得がいった」と、さばさばしていた。
腰を痛めている寺地はボールに十分に踏み込めず、ミスが多い。打点に入れた球を選んで思い切り叩き、展開を早くして会場をわかせるが、どうしても単発にとどまり、自らのサービスキープもままならない。ただしその単発は岩渕も揺さぶられるほど強力で、岩渕は計3つのサービスダウン。しかし第1セットの後半からサービスの確率を上げ、プレーの堅実さを増した岩渕が、そのまま第1セット、そして試合全体を押し切った。終始安定したプレーが、岩渕から寺地へのはなむけとなった。
シード選手としては「もともと苦手な相手で、有明では分も悪い。初戦だし、強豪でもあり、初戦としてはかなり緊張し、警戒して臨んだ。そのわりにはよい出来だった」と岩渕。寺地の引退を送る先輩としては「引退を決めている選手との試合は初体験で、まして親しい後輩。やりにくく、試合に気持ちが十分入らなかった」と語った。
試合後、寺地と岩渕は抱擁。岩渕には「今までつらかっただろうけど、おつかれさま」と声をかけられたという。観客席からプレゼントが贈られる中、事情を知らない観客も雰囲気を察し、涙の退場には温かい拍手が送られた。引退会見となった試合後の記者会見の席では一転さっぱりした表情で「小さい頃からの緊張から解放されて、すっきりした気持ち。01年の今日、全日本で初優勝したことが一番の思い出」と語った。全日本優勝とデ杯での活躍の功績をたたえるセレモニーが、今大会最終日に行われる。
倉沢 鉄也