2008年 11月10日
今大会のワイルドカードは3枚、そのうち2枚は全日本学生、全日本ジュニアの優勝者に与えられた。残る1枚で本戦出場を果たした17歳が江原弘泰(Fテニス)だ。昨年は秀明英光高校1年生にしてインターハイ・ダブルスで優勝(パートナーは川崎光)。この2年ほどジュニアツアーで世界を積極的に回り、実力を付けてきた。今年はウィンブルドンジュニア、USオープンジュニアで予選を勝ち上がり、2戦とも本戦で1勝。現在、ITFジュニアランキング38位。その真価が問われる全日本だ。
対戦相手は佐藤博康(フリー)。ダブルスで全日本を2度制したベテランだ。初優勝の94年に、江原は3歳。二人の間には19の年齢差がある。字は違えど同じ音のヒロヤス同士、ネットプレー主体の試合巧者に、早さが売りもの、気鋭のベースライナーが挑戦する図式だ。
第1セットはブレーク合戦となったが、「やっている間に、ドロップショットのくるタイミングがつかめてきた」と江原。ネットに詰める佐藤の横を、両手打ちバックハンドのパスが鮮やかに抜けていく。4-6で落とした佐藤の表情から余裕が消えた。第2セットの江原は課題とされるサーブも好調で、エースも奪った。「ファーストボレーをさせてから脚で稼ごうと……。ジュニアにはいないタイプなのでやりにくいと思ったが、キレずに追うことがいちばん大切」。6-1で完勝後、試合を振り返る説明も明快だった。
プレーにはひたむきさが漂うが、実は頭脳派。錦織圭(ソニー)を追う若者がまた一人、全日本デビューした。コートサイドでサインを求められると、楷書で書いた。楷書のサインは今後貴重品になるだろう。
次の相手は杉田祐一(三菱電機)、実績も実力も差があるのは事実だが、番狂わせが起きる可能性すら感じさせる、この日の勝利だった。
小島 宣明