5人の歴代王者が勢揃いし、華やかな大会となった男子シングルス。しかし、残酷な言い方になるが、刻々と変化するテニス界にあって、過去の栄光は意味を持たない。98年の覇者、石井弥起(ミキプルーン)は2回戦で姿を消し、過去4度全日本を制している本村剛一(北日本物産)も3回戦敗退。3連覇を狙う岩渕聡(ルネサンス)、01、04年のチャンピオン寺地貴弘(旅ポケドットコム)は準々決勝で涙を飲んだ。一つ流れを失えば試合をもっていかれる戦国トーナメントに生き残った2人は、日本テニス界の第一人者と韓国出身の伏兵だった。
結果を期待されて期待通りに勝ち上がってくる。第1シードの鈴木貴男(高木工業)は強い精神力を武器に決勝まで駒を進めた。初戦となった吉備雄也(早稲田大学)との2回戦こそファイナルセット・タイブレークにもつれこむ大接戦となったものの、その後は本来のサーブ&ボレーが爆発。準決勝の松井俊英(ミキプルーン)戦も、第1セットこそタイブレークで失ったものの、内容的には格の違いを見せつける圧勝劇。決勝に向けた抱負を聞かれ「自分のスタイルを貫くだけ。みんなが納得する“鈴木貴男のテニス”をして勝つことがテーマ」と胸を張った。
反対側のブロックからは、第11シードの權伍喜(ミキプルーン)が勝ち上がってきた。全日本の出場は00年以来7年ぶり。7年前も決勝に進出しており、全日本は出場した2大会ですべて決勝進出という好成績。準々決勝では第2シードの添田豪(ミキプルーン)を撃破。準決勝でも成長著しい19歳の伊藤竜馬(三和ホームサービス)をスライス中心のプレーで翻弄した。「相手に合わせてプレースタイルを変えている」という変幻自在なプレーが鈴木にどこまで通じるか。「7年前はアマチュア、今はプロ。7年前は自分にとってそれほど大切な試合ではなかったが、今は日本人選手と同じくらい大切」と權。「自信がある」というバックハンドスライスを武器に天皇杯を狙う。
初対決となる両者。順当なら鈴木貴男の10年ぶり優勝だが、相手の弱点を突く權のいやらしいテニスが鈴木のリズムを崩せば波乱もありうる。鈴木にしてみれば、まずは先に主導権を握りたいところだろう。
広報委員・フリーライター 成瀬 悦朗