スコアが示す通り、流れは“行ったり来たり”だった。第1セットは互いにサービスキープが続き、岩渕がタイブレークを制した。第2セットは伊藤が4−0と引き離し、5−2で迎えたサービスゲームはラブゲームで締めた。第3セットに入っても、流れは変わらない。2度のサービスブレークで伊藤が5−1とリード。ところが、ここから伊藤が試合をまとめるのに苦労する。サービスを2度落とし、5−5のタイに追いつかれた。
「もういける、と思ってしまった。向こうの執念も伝わってきた」と伊藤。「緊張はなかった」と言うが、シャープなスウィングが影を潜め、積極的な攻めが見られなくなった。「サービスのときにもうちょっと仕掛けられたが、守りに入ってしまった」と伊藤はこの場面を振り返る。一方、岩渕は相手の隙につけ込み、リターンからプレッシャーをかけた。「去年の(決勝の)こともあるし、勝ちが見えてから難しいのは知っているし、できることをやってなんとか食らいついていこうと思っていた」という。
だが、岩渕の逆襲もここまでだった。第11ゲームでは、不利なジャッジもあって、サービスダウン。伊藤も今度は最後をしっかり締めて、第3セット7−5で白星をつかんだ。「ああいうジャッジも試合のうち。それを次のゲームまで引きずってしまったのは、まだメンタルが未熟」と岩渕は素直に反省した。逆転負けで大会3連覇を逃したが、会見場に現れた岩渕はすでに平静を取り戻していた。「今はさっぱりしています。調子も良く、チャンスもあったが、3連覇する選手に比べれば足りない部分もあったと思う」。
一方、初めてベスト4に勝ち残った伊藤は「ミスをしても引きずらないで、またゼロから集中できるようになった。試合に出たり、しっかり練習をしてきたので、その積み重ねだと思う」と胸を張った。
広報委員・フリーライター 秋山 英宏